2014年06月26日

UMISACHI YAMASACHI

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ごぶさたしております。アトリエまつげです。
長らく日誌の更新が滞っていましたが、私たちは変わらず毎日を元気
に過ごしています。みなさま、いかがおすごしですか。

さて、この日誌、日々の制作や展覧会などの様子をお伝えできたらと
思い、始めたものですが、WEBへのアクセスをチェックしてみると、
意外にも私の列車や電車の旅の記録に関心を示して、この日誌を見る
方も多いようです。やっぱりいるのですね、列車旅が好きな人!
ということで、今回も、私たちが昨年の晩夏に訪れた宮崎・鹿児島、
まさかの三年連続での九州、列車の旅について書きたいと思います。

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夏の終わりなのに、まだ真夏の暑さを残す南九州、宮崎・鹿児島へ。
今回の旅もやはり、長距離鉄道大移動の旅です。
訪れる度に乗りたい列車が増えていく九州。私の心を掴んで離さない
魅力の宝庫、それが九州の鉄道!!
とくに今回乗車した特急海幸山幸は、以前から南宮崎の海岸線を走る
日南線に興味津々だった私の憧れの列車です。

JR宮崎駅と南郷駅間を走る特急海幸山幸は、その名の通り、宮崎の
山間と海岸線の魅力を一度に味わえる人気の観光列車なのですが、
一日一往復、それも土日祝日のみの運行と乗車へのハードルは高め。
私たちもこの列車への乗車に合わせ、旅の日程を組み直したほどです。
朝10時にJR宮崎駅を出発した列車は途中、青島や飫肥、油津などの
景勝地を経由して、約一時間半かけて終点の南郷駅に到着します。
青島では鬼の洗濯板、南郷近くでは七ツ八重と見どころに合わせて
徐行運転をしてくれるので、ゆっくり景色を楽しめました。

私はここ数年、南九州を列車で旅する度に車窓の風景に目を奪われ
てきましたが、日南線もやはりそう。
見れば見るほど、海の色や浜の形、そこに生えている木や花の姿が
まるで外国のそれのようで、とても不思議な感覚になるのでした。
私の故郷の海岸とも、北の列車の車窓から見た日本海ともまるで違
うのがほんとうに不思議。景色をじっと眺めながら、日本は魅力的
だなあと、しみじみ思うのです。

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列車の旅は時間も費用もかかり、効率はすこぶる悪いのですが、時間
と手間をかけないと得られないものや、見られない風景がやはりそこ
にはあるようです。私はなぜかそういうものに惹かれてしまい、いつ
までたっても、合理的に旅が進められません。

さて、南郷駅で下車し、向かったのは目井津港。せっかく目井津港に
来たのだから、と息巻いて新鮮な魚を食べられる食堂に入ったものの、
次の目的地の鹿児島方面への電車の出発時間がせまっていて、ゆっくり
食事どころじゃない!と、毎度恒例のドタバタ劇を繰り広げる私たち。
そんな私たちの姿をみた食堂のおばちゃんたちがとても親切に世話を
焼いてくれて、大急ぎで定食を用意してくれたり、駅までのタクシーを
呼んでくれたりと、とても良くしてくれました。
ああ、こころあたたかき目井津港。

南郷駅からは普通の日南線に乗り、南宮崎駅まで戻ることに。
特急列車と違い、乗車する日常の地元の人の様子を見られるのも、その
魅力です。この日も途中でたくさん地元の高校生たちが乗ってきました。
日焼けした肌と眼差しの強い目がとても印象的。
そういえば、旅を振り返ってみると、宮崎で見かけた少年少女には瞳の
澄んだきれいな目をもつ子が多かったような気がします。
なぜだろう。

列車に揺られ、眠気まじりのあたまでぼんやりと考えながら、窓の外
の青い海を見ていたら、ふと、その答えが見つかりそうな気がしました。

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Tae.
posted by matsuge at 13:24 | | 更新情報をチェックする

2013年04月10日

黒ははやとの風、赤はいざぶろうしんぺい

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外はすっかり春ですが、昨秋の鹿児島旅の話のつづきを。
指宿の玉手箱、天文館散策に薩摩料理、憧れのしろくまとの出会いと、
初日から大はしゃぎの私たち。遊び疲れて眠った翌日、驚きの幻想的
風景がすぐそこに待っていました。
宿泊した部屋の窓のカーテンを開けると、目の前には昇る朝陽を背に
くっきり浮かび上がる桜島!鹿児島に到着してから実は一度も桜島を
見られず、しゅんとしていたのですが、こんな形で出会えるなんて。
朝靄の中から浮世絵のような表情で徐々に浮かび上がる桜島は、ダイナ
ミックだけれど、眼下に広がる鹿児島の街を見守る姿がどこか優しく、
母性的でやわらかな雰囲気をもっています。
想像していたよりずっと繊細な印象におどろきました。
じっくり桜島を眺める貴重な時間となり、これも旅の良い思い出に。

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二日目の旅のスタートは、鹿児島中央駅から。
九州の名物列車、特急はやとの風といざぶろう・しんぺいを乗り継ぎ、
嘉例川駅へ向かいます。
駅でおやつのしろくまをテイクアウトし、いそいそとホームへ出ると、
すでに乗車予定のはやとの風が待機していました。
鈍く太陽を反射させ、たたずむ漆黒の車体は圧巻の存在感。クールで
どこかノスタルジックなデザインが、とってもかっこいいのです!
車掌さんも慣れているのでしょう。私たちを運転席の前に立たせ、記
念写真を撮ってくれました。写真、家宝にします。

なかなか溶けずに格闘したしろくまに流れる車窓の風景、隣の座席の
ご一行との楽しいおしゃべりと、一時間半の列車の旅もあっと言う間。
終点の吉松駅でしんぺい号へ乗り換え、人吉へ向かいます。
しんぺい号は、肥薩線いざぶろう・しんぺい号の吉松から人吉へ走る
下り列車なのですが、この列車もデザインが素晴らしく素敵です。
漆黒のはやとの風に代わり、いざぶろう・しんぺい号は真っ赤な車体。
趣のある古い駅舎に停車するときはもちろん、緑が鮮やかな山の間を
走り抜けるときも、シンプルな赤色がよく映え、どこを切り取っても
絵になる美しさです。

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途中、日本三大車窓とよばれるえびの盆地と霧島連山の前では乗客の
ために数分停車をしてくれるのも嬉しいところ。停車駅の大畑駅、矢
岳駅、真幸駅もそれぞれ見どころある駅で、おどろきの連続でした。
長く停車時間をとってくれるので、乗務員の方の案内とともに十分に
楽しむことができます。
鉄道の旅は乗っている間だけではなく、停車駅にも多くの出会いやよ
ろこびがあって、ストーリが生まれるのですね。停車のたびに乗客の
みんなが出て来て、写真撮影や乗務員の方とおしゃべりをするので、
ちょっとしたツアーのような雰囲気もあり、とても楽しい時間でした。

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しんぺい号に乗り、二時間。到着した人吉駅は有名な人吉温泉があり、
ここで多くの乗客が人吉駅の外へ。私たちはというと…、再び吉松に
戻り、今夜の宿のある嘉例川駅に向かいます。そもそもの旅の目的が
鉄道なので、こうしてぐるっと遠回りして目的地に行くわけです。
車内で食べるお弁当を調達し、次は上りの肥薩線、いざぶろう号へ。
お弁当は昨年の旅の九州横断特急で逃した憧れの栗めしと鮎すしを。
本当は人吉駅構内の立ち売りの売り子さんから買いたかったのですが、
あいにくこの日は不在。次こそは、とまた新しい目標をみつけました。

いざぶろう号では、こんな奇跡的なできごとも。誰かに声をかけられ
振り返ると、そこには前日に乗った指宿の玉手箱の乗務員の方が!
まさか旅の道中で再会するなんて驚きましたが、なにより、たくさん
いる乗客をちゃんと覚えておられることに感動しました。

明日も列車に乗って、あらたな場所へ。今夜はゆっくり休まなくちゃ。
というわけで、この話のつづきは、またこんど。

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Tae.
posted by matsuge at 19:25 | | 更新情報をチェックする

2013年01月12日

しろくまのあのこ

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昨年の秋に旅した南九州、鹿児島での思い出ばなしのつづきです。
旅の初日のミッションであった特急きりしま、指宿の玉手箱、指宿枕
崎線(旧なのはなDX)を無事に乗り終え、あとは宿でゆっくり…と、
いきたいところですが、やはりじっとしてはいられず、夜の街へ。
私は地方の商店街、とりわけアーケードが大好きで、旅先や出張では
必ず時間を作って立ち寄ります。商店街を歩くだけでその土地の雰囲
気を感じられるし、土地のものを買うのにもとても便利。私の旅の思
い出はいつも商店街でのできごとが印象深いので、きっとなにか引力
があるのでしょう。

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鹿児島の商店街といえば、やはり天文館。すっかり日が暮れていまし
たが、晩ご飯を食べられるお店を探しつつ、ぶらぶら天文館散策へ。
せっかく鹿児島に来たのだから、薩摩料理をと、あちこち歩いて見つ
けた薩摩の伝統料理屋にこの日は決まりました。
薩摩の焼酎を片手に、さつま揚げやきびなごのお刺身、黒豚の角煮や
地鶏を使った鶏飯など、薩摩料理を隅々まで味わうことができました。
九州はなにをいただいても美味しいのですが、ここで食べた、揚げた
てのさつま揚げはとくに美味しかったです。お店の方のお話によると、
鹿児島の家庭ではさつま揚げは手作りで、揚げたてを食べるのだそう。
おうちの味がそれぞれあるそうで、なんとも興味がそそられます。

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食事のあとは、まっすぐに天文館むじゃきへむかうことに。
そう、今回の鹿児島の旅では絶対に達成しようと心に決めていました。
鹿児島名物のしろくまを、本場鹿児島で食べること!
しろくまは氷の上に練乳とたくさんの果物をのせた、鹿児島のかき氷
のこと。今はカップ入りやアイスキャンデーになって全国で買えるよ
うになりました。私も夏になると京都で買って食べていたのですが、
そのたびに鹿児島のしろくまはきっと、いや、絶対にもっと美味しい
はず、と思っていたのです。
やっと叶えられた長年の夢。それも本家むじゃきで!と、鹿児島の方
に言うと笑われそうですが、本当に感動の瞬間でした。
お店の前に鎮座している大きなしろくまの手に握られたカード、
「やっと、逢えたね」の文字がまるで私に話しかけているよう…。
お店に入ると、夜の8時を過ぎているというのにたくさんのお客さん。
私たちのような観光客ももちろんですが、よく見ると会社帰りのおじ
さまたちや年配のご夫婦まで。きっと地元でもしっかり愛されている
のでしょう。みなさん美味しそうにめしあがっていました。
私たちもようやく空いた席で待つこと数分。想像以上に大きいしろく
まの登場に一瞬たじろぎましたが、ここはふたりでせっせとスプーン
を動かし、あっというまに完食!

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ふたりでひとつで十分、満足です。そのビジュアルとは裏腹に、本家
しろくまはさっぱりとしたお味。練乳も甘すぎず、すっきりとしてい
て全然もたれることはありません。なにより、氷そのものが美味しい
ことには驚きです。口にいれるとふわふわと軽やかで、氷というより、
まるで雪を食べているかのよう。たっぷりあった果物もやわらかな氷
とともににぺろりでした。
ほんとうに会えてよかったね、とおもてのしろくまをなでて、宿に戻
ることに。大満足の商店街めぐりとなりました。
ふと、鹿児島についてから電車に乗ってばかりで、桜島をまだ見てい
ないことに気がつきました。その桜島との奇跡の対面が翌日に待って
いたのですが、このお話しは、またこんど。

Tae.
posted by matsuge at 19:18 | | 更新情報をチェックする

2012年10月20日

指宿へ、いぶたまでどんぶらこ

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長い休暇に入ると、私たちは列車に乗って、旅に出ます。
今年の秋は、南九州へと向かいました。
はじめて訪れたときから、どこか懐かしく感じられ、土地の雰囲気が私に
よく合っていた九州。そして乗りたい列車が山ほどある九州。またいつか
訪れたいと思っていたので、あこがれの列車に再び乗車できるビッグチャ
ンス到来に、ドキドキを鎮めるのが大変なほどでした。

今回のルートは、鹿児島〜熊本間。
特急きりしま、指宿の玉手箱、指宿枕崎線、はやとの風、いざぶろう・
しんぺいを三日間に分けて、乗り継ぐ計画です。
旅のはじまりは加治木駅から特急きりしまに乗って鹿児島中央駅へ。

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昼食には鹿児島ラーメンを食べました。鹿児島ラーメンといえど種類はた
くさんあるようですが、白濁したスープがその基本だとか。
ここで気になったのが、ラーメンのお供に出される大根の甘酢漬け。
各テーブルにたっぷりの量で置いてあり、自由にとっていただきます。
もれなく私も食べたのですが、なんともさわやかで優しいお味。ラーメン
とも相性がよく、驚きの出会いでした。
鹿児島では、定番の組み合わせなのでしょうか。

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腹ごしらえの後はこの日一番楽しみにしていた指宿の玉手箱へ乗車します。
JR鹿児島中央駅から指宿駅間を結ぶ、通称いぶたま。
車体が白と黒に塗り分けられ、車内は海を眺めるカウンター席をはじめ、
遊び心のある内装で人気の列車です。

この列車、乗り込んだ瞬間にとびきり楽しい世界が広がっていました。
たった一時間の乗車では物足りないほど!私たちは錦江湾を望むカウンター
席に座ったのですが、車窓の素晴らしい景色に見とれつつ、車内のあちこち
に仕掛けられた面白いディスプレイに気もそぞろ。
こんなに素晴らしいアイディアで列車を作ったJR九州に感心してしまいます。
外国人のお客さんも多いのも、納得です。

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到着した指宿駅ではアロハシャツを着た駅員さんにお出迎えされ、気恥ずか
しい気分に。指宿は南国の雰囲気漂う、海の町でした。
名物の砂風呂に入る時間はなく、サイクリング用の自転車を借りて指宿の町
をまわることにしました。

道のあちこちに生えている植物が、ふだん見慣れない不思議なものばかりで、
思わず自転車を止めて観察。椰子の木やブーゲンビリア、ハイビスカスが民
家の庭で元気いっぱいに育っていました。
帰りの電車の時間に合わせ、急ぎ足で戻ってきた私たちを見て、アロハのお
母さん方はなぜか大爆笑。「そんなに早く帰ってくるなら、私の家の自転車
をタダで貸してあげたのに!」と声をかけて頂き、思わず私も吹きだしてし
まいました。町の人の温かな思いやりが、またひとつ、私の指宿の思い出に。

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帰りは指宿枕崎線に乗って戻ります。
以前運行していた、なのはなDXとよく似た黄色い電車です。
指宿枕崎線はJR九州の最南端の路線で、鹿児島市内に出る地元の方が通勤や
通学に使う電車だそう。
私たちが乗った電車にも途中、多くの高校生が乗り合わせ、車内が一気に華
やぎました。部活帰りなのか、高校の名前が入ったTシャツや帽子が眩しくて、
スケッチをする私の目はきっと細くなっていたはず。

鹿児島中央駅に着いたのは、日も暮れ始めた頃でした。
夜はあのかわいい白熊に会いにいくのですが、その話はまたこんど。

Tae.
posted by matsuge at 16:41 | | 更新情報をチェックする

2011年10月05日

湯布院の風、ゆふいんの森号

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九州の旅、いよいよ最終目的地の由布院へ。
由布院駅を出てすぐ目の前に広がる由布岳の姿には、しばし息をのむほど
圧倒的な存在感が漂っています。町のどこにいても由布岳の姿を見ること
ができ、まさに町の守り神。旅から帰ってきた今も、まだ私の目の中のど
こかに、由布岳があるような不思議な感覚があります。
山は地方によってそれぞれの雰囲気を持っていて、その違いを知るのも私
の旅の楽しみのひとつです。今回の旅でも九州の山の力強さをしっかりと
刻みました。

翌朝は早起きをして、お宿の近くの金鱗湖まで早朝散歩にでました。
歩いてまもなくたどり着いた金鱗湖は、朝のきりりとした冷たい空気を湖
面にあつめ、霧をまとい凛とした佇まい。草のかげからひょっこり顔を出
したつがいの鳥たちが、一瞬の間をおいて颯爽と湖畔を飛び去る姿がとて
も格好よく、風と草がすれる音と鱗のように細かく光る湖面の模様と相ま
って、印象的な美しい朝をむかえることに。

午後は由布院バーガーを食べ、急ぎ足でノーマン・ロックウェル美術館へ。
帰りの列車の時刻がせまっていたので短い時間でしたが、ユーモラスな
名物館長さんのお話を聞き、またの再会を約束したのでした。
由布院駅から久留米駅までは私の憧れの列車、ゆふいんの森号で。
眠ることなくずっと見ていた車窓の風景。山にゆっくり沈む夕日を、風に
揺られる田園を、小さな踏切で手をふるこどもの笑顔を、私はきっとこの
先もときどき思い出すのでしょう。

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posted by matsuge at 17:05 | | 更新情報をチェックする

2011年10月01日

阿蘇のはらぺこ列車、九州横断特急

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九州の旅、二日目は熊本から九州横断特急に乗り、大分へと向かいます。
三時間ほど乗ることになる九州横断特急は、別府駅から人吉駅までをつな
ぐ横断列車なのですが、これも私がどうしても乗りたかった列車です。
駅弁を車内で食べ、美しく流れる車窓の風景を眺め、ときどきスケッチを
して…と、長い列車旅のイメージトレーニングはまさに完璧。

ところが、動き出してまもなく流れたアナウンスに驚愕の事実が…。
なんと、期待していた駅弁が、熊本駅を出てすぐに完売したとのこと。
車内販売開始のお知らせ後、すぐのことだったので、一瞬頭がまっしろに
なったのですが、よく考えてみれば、私たちの座席は先頭車両の前から二
番目。通常、車内販売は後方の車両から前へと移動してくるので、たとえ
駅弁がたくさん用意されていても、後方のお客さんが順に買ってゆけば、
先頭車両にたどり着く前に多くは残らないはずです。
それにしても、完売はまったくの予想外。列車が発車したのはちょうどお昼
どきで、私たちは昼ご飯代わりになるものを何も用意していなかったため、
まさかの昼ぬき列車旅の決定です。

盛り上がった気分もいっきに下がり、なんともふぬけな状態の私でしたが、
いざ列車が進んでゆけば、目の前に飛び込む九州の大自然の風景にくぎづ
けになっていました。大きくどっしり連なる山の峰、澄みきった川の水が
光をあつめてきらきらと反射する様子、うつくしく整えられた段々畑。
力強くて野性を秘めた阿蘇の雄大な姿に、しばし言葉をわすれ、眺めてい
たのでした。
途中、山の急勾配を上るため、スイッチバックをする列車の懸命な動きが
振動となって、体に伝わるところもまた、感動的。
気がつけば、あんなにはらぺこだった私のおなかも、いつのまにか満たさ
れていたような、いい気分でした。

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posted by matsuge at 23:02 | | 更新情報をチェックする

2011年09月30日

三角線、みすみと太平燕

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外がすっかり秋めいてきました。みなさまはいかがおすごしでしょうか。
さて、アトリエまつげのふたりはこの夏、九州へと旅に出かけました。
九州はどこも面白そうで、行き先にとても迷ったのですが、良質な温泉と
豊かな地形、乗りたい列車を決め手に、今回は九州の中部、熊本と大分の
ふたつの県をめぐることにしました。

初日は九州新幹線や在来線を乗り継いで熊本へ。熊本駅に到着後、すぐに
向かった先は三角港です。なぜ三角港かというと、熊本から三角まで走る
三角線に乗りたかったからなのですが、実はずっと、この三角というネー
ミングが気になっていたのです。さんかく。きっと三角港には、三角形の
色々が溢れているはず…。などとあれこれ想像していたのですが、出発の
直前に、三角を“みすみ”とよむことを知り、私の頭の中で作り上げた三角
形ワールドはあっけなく消えてしまったのでした。
そんなこともふくめ、楽しみにしていた三角線。一両編成の小さな列車で
はありますが、情感あふれる車窓の景色と駅舎の数々、優しい地元の方と
の交流もあり、忘れられないとても良い時間となりました。
しかし、この三角線の旅、終着駅の三角港で奇跡が待っていたのです。
なんと、三角港のあちこちに三角形のオブジェを発見!わずか一部ですが、
私の描いた三角ワールドの復活に、うれしさがこみ上げてくるのでした。

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この日の夕食は、熊本名物の太平燕を。コクのあるスープと春雨の麺がよ
くあい、とても美味しかったです。揚げた卵もまた、いいアクセント。
すっかりいい気分で夜をむかえたふたり。翌朝は憧れの鶴屋百貨店めぐり、
大分県へとむかう、さらなる長旅が待っているのでした。

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posted by matsuge at 17:32 | | 更新情報をチェックする

2011年01月29日

Twilight Express

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クリスマスの翌日、一路北海道へ。つい先日訪れたの沖縄の余韻もあり、千歳
空港に到着しても北国に着いた実感がなかったのですが、それもつかの間。
一歩建物の外に出れば大雪と氷点下の空気で道もカチカチ。アイススケートの
ようにつるつるとすべりながら歩けば、ここはまさに北国!しっかり冬の北海
道を満喫した二日間ですが、最終日に旅のメインイベントが待っていました。
それは…憧れの寝台列車、トワイライトエクスプレスへの乗車!この度、私の
たっての希望でようやく乗ることができました。札幌から京都まで24時間。
夜汽車に乗って旅をしめくくることができるなんて、我ながらロマンに溢れる
最高のプランです。
深緑が印象的な車体に今は珍しい食堂車もついています。車窓から見える風景
は進むごとに変わり、一瞬足りとも目を離せません。
夕暮れに紅く染まる雪原、真夜中に仄かにともる駅舎の灯り。出口の見えない
深い森、荒ぶる日本海。まるで夢の中のような風景を背に、列車は夜の闇をす
りぬけて、森や海の間を木枯らしのように走って行くのでした。
日が昇る少し前、ふっと目の前になにも見えない場所が広がりました。灯りも
音もなにもなく、ただ気配だけが支配しているような不思議な場所。古い神話
やおとぎ話はきっとぜんぶ本当の話だったのかもと、すいこまれそうな深い闇
に思わず息をのみ、考えてしまうのでした。大昔に誰かが暮らした土地、今も
誰かが暮らす土地。私の知らない土地と暮らしが確かにそこにあるのだと、当
たり前だけれど、忘れてはならない大切なことを強く実感した旅でした。

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京都で列車を降り、終着駅の大阪に向かう列車と車掌さんにありがとうと告げ
て、その姿が見えなくなるまでお見送り。札幌から京都、約1500キロの旅は
私に大きな感動を残し、幕を閉じました。
24時間飽きることなく車窓を見つめていた私。寝不足で翌日は使いものになら
なかったことは、言うまでもありません。

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posted by matsuge at 18:40 | | 更新情報をチェックする

2011年01月01日

沖縄やんばるの旅

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2010年の秋冬、アトリエまつげのふたりは多くの旅を経験しました。
秋には小豆島、道後に。そして冬には沖縄、北海道に。日本の端から端へと
長い移動を続けた旅でした。今回は沖縄のやんばるの旅についてのお話です。

今回旅したやんばるは沖縄本島の北部、亜熱帯の森が広がる自然豊かな村々
です。陽を浴びて白くまっすぐのびる道、風にしなる背の高い草、濃い緑が
重なるように茂る森、珊瑚の粒子できらきらと光る白い砂浜。
やんばるの自然が持つ、強くてしなやかな力は圧倒的です。ただ身をまかせ
ていれば、気配だけで静かに心を満たしてしまうような土地でした。

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そして今回の旅で、どうしても訪れてみたかったのが、やちむんの里です。
ぽってりと厚く、おおらかでシンプルな焼き物はやちむんとよばれ、島で長
年親しまれてきたうつわです。どれも沖縄の風土そのものを表現しているよ
うで、その制作現場にわたしはずっと興味がありました。

やんばるからバスに揺られて二時間。
島の中部、読谷村にある窯元はまさに職人の村で、青空に使い込まれた昇り
釜がよく映えます。共同売店では、おばあと黄色いわんこが店先で静かにむ
かえてくれました。ちょうど器を選んでいるときに職人さんにお会いしたの
ですが、その無骨な後ろ姿はどことなくやちむんに似ていて、うつわを抱え
ながらとても温かい気持ちで村を後にしたのでした。
今度はぜひ、やちむんの里で年に一度開かれる陶器市に訪れたいものです。
posted by matsuge at 19:00 | | 更新情報をチェックする
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